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エンドレス・サマー・スクラッチ

イオちゃんってどんな子?

こんな子

0801katana.jpg















空は、これ以上ない程の快晴。
目の前には広がる海、足元には白い砂の平野、辺りには生い茂る南国じみた植物。

<彼女>の降り立った地は、まこと残念なことに、驚くほど平和であった。

「青い海に青い空、ホンット良い所だなぁこの星は……これが任務でさえ無ければなぁ……はぁ……」

<彼女>は、誰に聞かせるつもりもなく、ぼそりと、そう一人ごちた。

落胆するその背中が小さく見えたのは、その覇気の無さが理由か、それとも単に彼女が小柄ゆえか。
<彼女>ご自慢の、その礼服じみた漆黒の戦闘服も、着ているのが今の<彼女>だと、その姿はまるで、くたびれた会社員のそれだ。
亜人種の最たる特徴である、その色違いの双眸も、心なしか今日は、曇っているように見えた。

『気を抜かないで下さい、イオさん。そのエリアの安全はほぼ確保されているとはいえ、それでも100%安全という保障はありません。
もしもの事が起きてからでは手遅れです。十分に注意して進む様に』

「了解。おれももう研修生じゃないんだ、その辺りはちゃんと解ってるよ」

オペレーターが注意を促すが、今の彼女にとっては、耳に入る全ての言葉が雑音程度にしか聞こえていないのだろう。
<イオ>と呼ばれたその少女は、自身をサポートするオペレーターに対して、少しばかり憤慨した様子でそう呟いた。


―――宇宙移民船団<オラクル>によって、つい最近新たに発見されたばかりの未開の惑星。
水の惑星<ウォパル>

広大な砂浜、何処までも続く海、燦然と輝く太陽。
少し手を加えれば、絶好のリゾート地として名を馳せていたであろう程度には、それはそれは美しい惑星であった。
この星にダーカーの出現情報が確認さえされていなければ、の話ではあったが。

「んー……とは言っても実際、のどかなモンだよなぁ。 ま、こんな場所じゃぁ仕方無いのかも知れないけど」

『聞こえていますよ、イオさん。任務中の無駄な私語は控えて下さい』

「はいはい、解ってるってばブリギッタさん……頑張るってば」

彼女は現在、探索任務の遂行の為に、この水の惑星を訪れていた。
とはいえ、探索任務とは言っても、そう難易度の高いものではない。
イオが現在行っているのは、土壌の地質や気候の変化に関する簡単な調査である。

先人たるベテランアークス達が、より安全に、より確実に任務を達成できる様に下準備をするのが、今のイオに与えられた任務であったのだが。

「ここまで何もないとなぁ……何というか、おれはもっと、こうさぁ……」

彼女が居る現在地に、何もないのも当然、彼女はアークスの中では新人も新人なのだ、そうそう危険な任務が宛がわれる筈もない。
実際の所今の段階では、彼女は一般人に毛の生えた程度の実力しか無いというのが事実であるし、彼女自身もそう認識しているつもりではいた。

だがそれでも、彼女がやりたかった事というのは、「こういう事」では無いのだ。
人類の平和と安寧を守るために、宇宙に点在する邪悪な存在と戦う英雄。彼女はそういったものに憧れて、アークスへ志願したのだ。

今のイオの任務も、間接的に言えば、確実にその<平和と安寧>に貢献しているのだろう。
彼女もそれは理解はしているつもりであったが、それでも、どうしても自身の想像していた理想と現実のギャップに、少しばかり肩透かしを感じてしまうのも、紛れも無い事実である。

心の中に多少の不満を抱えつつも、だからといってどうこう出来るわけでもなく、地道に任務をこなす事以外に、今の彼女に出来ることは何も無いのであった。



「―――ん……あれって、もしかして……!」

だが幸いな事に、世の中そうそう悪いことばかりが続く様には出来ていないらしい。

イオが探索中に見つけたのは、重要な情報でも、貴重な資源でもない。
だが、いかな任務の途中といえど、彼女が<その姿>を、見間違えるはずも、見逃すはずもなかった。

「おーい、センパイ!」

一目でそれと判る特徴的なボブカット。常夏の地に似合わない、ゆったりとした道士服。
数多のダーカーを屠り、今もアークスとして最前線に凛として立ち続ける、偉大な<センパイ>。

彼女がそれを視認した次の瞬間には、イオはその<センパイ>に向けて大声で呼びかけながら、ぶんぶんと手を振っていた。
その姿は、まるで敬愛する主人と再会した忠犬の様で。
今の彼女を見て、ほんの5分前まで気だるげで憂鬱な表情を浮かべていたと考えられる者は、恐らく居ないであろう。その位には、彼女は本当に嬉しそうな笑みを浮かべていた。

そんな大きな声で唐突に呼ばれた<センパイ>は、一瞬驚いたようにぴくっと反応したが、すぐに自身に呼びかける声の主を理解したのか、走ってくる彼女に向けて、ゆるりと向き直る。

「―――あら、イオじゃない。どうしたのかしら、こんな所で」

「見てのとおりの探索任務だよ。退屈で仕方なくってさ、センパイに会えたのは幸運だったよ」

「そう。頑張ってるのね……ふふっ」

「センパイこそ、こんな所で何やってるんだよ? おれはてっきりセンパイくらいの腕ならもう少し前線の方にいると思ってたんだけど」

イオが怪訝な顔をするのも、不思議な話ではない。

本来、実力上位のアークスというのは、もっと惑星探索の最前線で、危険な原生生物やダーカーの駆逐を担うのが主な任務のはずであった。
こんな僻地でのんびりと哨戒任務など、基本的にはありえない話なのである。

「私は……そうね、貴方と同じ探索任務、といった所かしら」

「へぇ……センパイくらいのアークスでも、まだそういう事をやったりする事もあるんだ。ちょっと意外だな」

「えぇ。でも、丁度良さそうな子がいなくてね……貴方に会えたのは、私にとっても幸運だったわ」

イオは一瞬、<センパイ>の発言の意図が理解出来なかった。
彼女にとって、<センパイ>に会えたことは幸運以外の何物でもなかったのだが、その逆に関して言えば、<センパイ>の側に利点などない筈。

そんな事を考えていたのが原因か、それとも単純に<センパイ>に会えた喜びで気が抜けていたのか。
彼女は、背後から迫る『それ』が自身に接触する瞬間まで、その存在を感知することができなかった。

「―――えっ!?」

唐突に右腕に走る違和感。何か掴まれているかの様な、そんな感覚。
イオがその感覚に気がついた時には既に、彼女の右腕は、がっしりと、その『触手』に絡めとられていた。

驚いて彼女が背後を振り返ると、その目に飛び込んで来たのは、自身の腕に巻きついているものと同じような赤黒い色の、大量の触手。
先ほどまで確かに何も無かったはずの場所で、うぞうぞと蠢くそれの中の数本が、彼女の腕へと真っ直ぐに伸びて絡み付いていた。


一瞬自身の身に何が起きたのかが理解できず、呆けた様な驚いた様なそんな表情の彼女を現実に引き戻すかの様に、眼前の<センパイ>が満足げに喋り出す。

「貴方なら被検体としては必要十分。戦力として数えられないのが残念な所だけれど、今回は妥協しておきましょう」

本来、唐突な事態に一瞬頭が真っ白になったイオにでもある程度理解できるくらいには、この状況は解りやすい物である。
十中八九、この触手の様なものはダーカーの兵器の類。そして自身はそれに捕らわれたのであろう、それはほぼ間違いない。

だが、イオの目の前には、そのダーカー駆逐の達人である、歴戦のアークスが一人、何をするでもなくその状況をニヤニヤと眺めているのだ。
イオには、それの意味する事だけが、未だに理解できない。

いや、彼女とて愚かではない。うっすらと理解はしている。だがそれでも、どうしてもその『可能性』から目を背けたかった。

「センパイっ!? どうしたんだよ! どういう事!?」

その『可能性』が間違っている事を証明する為に、彼女は懇願する様な思いで、<センパイ>へと問いかける。
どうかこの状況が、出来の悪い悪夢の類でありますようにと、一縷の望みを託して。

だが、こういった半ば最悪の状況下では、悪い知らせとは連鎖するものだ。
イオの眼前に立つ<センパイ>は、彼女の悲痛な叫びに対して、心底意地の悪い笑みを浮かべながら、嘲るように言い放つ。

「あっはは! これでもまだ気づいてないなんて、鈍い子ね。 貴方、<アークス模倣体>を見るのは、初めてかしら……?」

「模倣体って、嘘だろ……!? おい、冗談だよな!? センパイっ!!」

イオとて噂に聞いたことくらいはある。ダーカーが優秀なアークスを拉致し、そのクローンを作成しているという眉唾な話。
だが、実際にその模倣体を見た事のある者など彼女の周りにはいなかったし、イオ自身も、流石にそんな事はあり得ないだろうと楽観視していた。

「ふふっ、冗談だったら良かったのにねぇ。残念」

だが、目の前にいる『それ』は紛れも無い現実の存在なのだ。
イオは、甘い認識をしていた自身を今になって後悔する。

今更になって状況を完全に理解したイオだが、だからといって何が出来る訳でもない。
眼前のそれに一矢報いようにも、片腕を封じられては自慢の弓も何の役にも立たず、最早彼女に、反撃の手段は残されていない。
せめてもの抵抗に『触手』を弓で思いっきり叩いてはみるが、ぶにぶにとした不快な手応えが返ってくるだけ。

まるで児戯のような抵抗を嘲笑うかの様に、彼女の右腕に絡んだ触手が、凄まじい力で彼女を宙へと吊り上げた。

「ひっ……!?」

ぐちゅぐちゅと気持ちの悪い音を立てながら、背後にある多数の触手が次々と彼女の身体に絡んでいく。
イオはそれを懸命に振り払おうと試みるが、今更そんな程度の抵抗で何が変わる訳でもない。
その内数本は残った彼女の左腕に。更に何本かが彼女の両足を束ねる様にして器用に絡めとる。

イオに対する侵食行為が始まってものの十数秒後には、彼女の身体は中空に『T』の字に磔にされる様にして、完全に拘束されていた。

「それじゃ……改めて、『初めまして』。貴方の頭でも、そろそろ理解して頂けたと思うのだけれど。ご覧の通り、私は、貴方の大好きな<センパイ>の模倣体。宜しく、ね?」

そんな状態になったイオを舐るような目つきで眺めながら、<センパイ>の顔をした悪魔が歩み寄る。
これから自分は何をされるのか。それを想像するだけで怖気が走る。

イオは何とかして拘束から逃れようと、渾身の力で自身を戒める触手を引っ張るが、どれだけ力を込めようと、絡みついたそれは、ぎちぎちと鈍い音を鳴らすだけに留まった。
それも当然といえば当然の話。人間一人捕らえられない程度のものなら、初めから拘束などとは呼ばないのだ。

つまりこの先、例え何をされたとしても、それを受け入れる事しかできない。
その恐怖が、ゆっくりと、彼女の心を侵食してゆく。

「っ……待ってセンパイっ! 悪い冗談はそろそろ止めてよ!もう、解ったから……っ!」

「模倣体No.205315より―――検体確保。海岸エリア1、A-7に転送装置要請」

万に一つの望みを賭けた懇願も、あっさりと一蹴され。

「ぃやだ……! 誰か……っ……助けて………誰かああぁぁぁッ!!」

精一杯の懇願も、こんな僻地では聞く者がいる筈も無い。






「―――さて、と。それじゃ、一応フォトンのジャミングはしているけれど、誰が通りかかるとも限らない。
星からの転送装置が来るまでに、少しでも貴方のデータを貰っておかないと、ね。
大丈夫、安心して? これでも、極力人気の無い場所を選んだつもりよ。奇跡でも起きない限りは、助けなんて来ないから。ふふっ」

その言葉を皮切りにして、夥しい数の触手が、イオの周りをぐるりと取り囲む。

ねっとりと光沢を放つ夥しい数のそれは、その一本一本が自身を『分析』する道具だと理解している彼女にとって、これ以上ない恐怖を与えるものであった。
イオはその壮絶な光景に、最早声を出す事も出来ず、歯をかちかちと鳴らし、目に涙を浮かべることしか出来ない。

「お、お願いだから……やめて……っ」

「ふふっ。そんなに怯えなくても大丈夫よ? だって……」

ずるりと、数ある触手の内の数本が、イオに向けてゆっくりと伸ばされる。

来る。そう直感した彼女は、反射的に目を強く瞑る。
これから自身を襲うのは、どれだけの恐怖か、どれだけの痛みか。それを想像しただけで、もはやそれを見る事すら恐ろしい。

だが、そんな震えるイオを襲ったのは、彼女が予想していた『痛み』とは別種の、もっと特異な『刺激』であった。

「―――っひあぁっ!?」

それは、『くすぐったさ』。
唐突に自身を襲った、全く予想だにしていなかった類の刺激に、イオは閉じていた目を大きく見開き、素っ頓狂な声を上げる。
自身に迫ってきた触手の内、ある物は大きく開いた胸元から、またある物は腹部にある上下の服の境目からその身体の中に滑り込み、彼女の身体を嘗め回し始めたのである。

「ひぅっ……な、何だよっ、これっ……んくぅっ……!」

胸元のそれは、拘束されて大きく開かれた腋の下へと滑り込み、ザラザラとした先端で思うように撫で回し、
腹部のそれは、そのままゆっくりと揉む様にして、彼女の腹部を撫で付ける。

「だから言ったじゃない、そんなに怯える必要は無いって……ね……? 痛くないでしょう……?」

「くひひっ!なんで、こんなことっ……んぁっ!」

一つ一つの動作は緩慢で、イオにも我慢できないほどの刺激ではない。
それでも、拘束されて身動きの取れない状態でこんな事を延々と続けられては、そう長くも持たないだろうことは彼女自身も理解していた。

「何故かと言われると、そうね。貴方達の『心』を頂く為、かしら」

「心って……んひっ……! そんなっ……こと……ぃひぃっ!」

「貴方達からしたら馬鹿みたいな話でしょう? でも、出来るのよ、私達には。むしろ身体なんて、性能だけで言えば、私達の方がずっと上。だから今更興味なんて無いの。
けれど何故か、貴方達アークスは時折、私達の予想を凌駕する力を発揮する。私達にはそれが未だに理解できない……だから、貴方達にあって私達に無い物。『心』がきっとその原因なんでしょう」

「だからってっ……なんで……くくっ……!」

「貴方達の身体を出来るだけ傷つけず、心をまっさらにするには、結構効率がいいのよ、これ。
大丈夫よ、まだそう簡単には死なせたりはしないわ。貴重な被検体だもの……」

「っそんな……馬鹿なっ……んひぃああぁぁあぁぁぁッ!?」

次々と頭に浮かんでくる疑問を苦しげに模倣体へと投げかけていたイオの言葉が唐突に詰まる。
腋の下でのろのろと動いていた触手が唐突に、先端でこしょこしょと引っかく様に動きを変えたのだ。

急激に強くなった自身を襲う刺激に耐えられず、イオは思わず引きつった様な笑いを吐き出し始める。

「うっくぅあっははははははははははは! ちょっとっぉほほほほほほほほほっ! ちょっとまってっぇっへっへっへへへへへ!
つよっつよいッひひひひひっひひひひ! つよいってばぁぁあぁっはっはっはっははははははははは!」

「お喋りの時間はお終い。まだまだ聞きたい事ははあるのでしょうけど、私にとっては、全部どうでも良い事……貴方には悪いけど、そろそろ本格的に始めるわ」

その言葉に同調するかの様に、イオの身体を嬲る触手の動きが活発になる。
腋の下の触手はかりかりと窪みを掘り返す様な動きに変化し、腹部の触手はぶるぶると高速で震え、波打つ様にその腹部を責め始めた。

触手自体は少数とはいえ、そのくすぐったさは文字通り人外じみたもの。
一本一本が人間の手のそれとは比較にならない速度と精度で動き回り、上半身の弱点という弱点をひたすらに、休む事無く嬲り続ける。

無防備な身体を、触手がずるりと一撫でする度に、どうしても堪え切れない歪んだ笑いの衝動が、彼女を包んでいく。

「んぁああぁあっッはっはっはっはっははははははははははは! これっっぇっへっへっへへははははははははは!
これきっっついぃっぃぁっはははははははははは! んぅあぁっーーっはっはっはっはっはははははははははっ!!」

アークスがいくら対ダーカーの修練を積んでいるとて、そんな『くすぐり』に対する訓練などしている訳も無く。
アークスである、という一点を除けば、年端も行かぬただの少女であるイオに、そんな苛烈な刺激が我慢できるはずも無かった。

「……あら、もしかして貴方、案外くすぐったがりなのね……丁度良いわ、壊すまでの手間が省けて」

「こわぁッんひぁっははははははははははっ! 壊すってぇぇえっっへっへへへへへへへへへ!
なにをぉおぉおおっほほほほほほほっほほほほほほ! ぅぁああぁーーっっはっはははははははははははははっ!」

「だから言ってるじゃない、貴方の心を貰うって。貴方にはここで、文字通り『心が壊れるまで』くすぐられて貰う。マザーに持ち帰って研究するのは、その後」

「そんっなぁぁあぁあぁぁーーっっはっはははははははははっ!! うぅっくぁっっははっはははははははははははは!!
やだあぁぁっっっははははははっはははははははは! いやだぁぁあぁぁぁぁぁあはっっはっはっはははははははははっ!!」

自身を襲う刺激をほんの少しでも和らげる為か、それとも、その言葉に対する拒絶の意思か。
イオは唯一自由に動かせる首をぶんぶんと振り回し、必死にくすぐったさに抵抗しながら、懇願の言葉を一心不乱に口にする。

「ふふっ、まだまだ哀願する余裕はあるのね。大丈夫よ、もう少しすれば、そんな事をする気も失せると思うわ」

「あぁぁあーーっっはっはっははっははははははははははははは!! そんっっなことっっほっほほほほほほほほほほほほっ!
ぃっやだぁああぁあぁっっぅああぁっはははははははははははははは!! んくぅぅううっぁっははははははははははは!!」

「……嫌だとか何とか、そういうのでどうこうなる物でも無いの、判るでしょう? いい加減煩いわ。余計な事を喋るのを止めなさい」

だが、その懇願ですら、今の模倣体にとっては耳障りなのか。
模倣体の意思に応えるように、唐突にイオを責めていた触手の先端の形状が、より彼女から悶笑を搾り出すのに適した形状に変化する。

「―――いいぃっあっあっああぁぁぁああーっっはっはっははははははぁぁあっ!? んっぎぃッぁあっはははははははははっ!?
ふぎぃっひっひっひひひひひひひひひひひひひひひひっ! ぃひあぁぁぁあっっはははははははははははははははっっ!!」

腋の下をかりかりと引っかいていた触手は、先端が多数に枝分かれし、各々思うがままに、無防備に晒されたそこを無遠慮に這い回り始め。
脇腹で震えていた触手は、手の様な形状へと変化し、それぞれがぐにぐにと揉んだり、つんつんと突いたりと、先程までよりも高度な責め方で、彼女を苛み始めた。

「まぁぁあッあっっはっははははははははははははははははははは!! まってえぇぇえぇへっへへへへっへへへへへへへへへ!!
ほんとにくるしッッぃひひひひひひひひひッ!! くるしいぃいぃひひぃあぁぁあはっはっははははははははははははっ!!」

「……そんなの当たり前じゃない。そういう風にしてるんだから。まぁ、その内楽になるから大丈夫よ。そう、遠くないうちにね」

「そんにゃのぉぉおぉあッっはっはっはははっははははははははははははははッ!! そんなのやぁだぁぁぁぁあぁっっはっははははっぁははははははっ!!
たすけッぇっひゃはははははっははっはははっははははははははは! だれかぁっぁはははは! だりぇかぁあぁああぁっはっはっははははぁぁぁっ!!!」

長時間の望まぬ笑いに満たされて、着々と奪われていくその体力。どれだけ足掻いても、その全てが無為に終わる事による精神的疲労。
最早、自力での脱出は不可能と言って良い状態となった彼女は、この声が、せめて誰かに届けばと、必死に叫ぶ。
だが、そんな声が届いていれば、今頃彼女はとっくに解放されている事だろう。現在もこうして責められている事が、その声が誰に届く事もない何よりの証だ。

その行為すら徒労と知る<模倣体>にとっては、その解放を求める叫びは所詮、聞くに堪えない程のけたたましい笑い声を上げながら、
一瞬でも触手から逃れようと、びくびくと淫靡なダンスを踊るイオを眺めて愉しむだけの「任務」に、ほんの少し、一味を加える為のスパイスに過ぎない。

「くすくす……盛り上げ方を弁えてるじゃない……」

<模倣体>は、ぼそりと、誰に聞かせるでもなく、呟いた。






「―――案外頑張るのね、貴方」

それから少しして、唐突に、イオを責め立てていた触手が一斉に動きを止め、彼女の身体から、ゆっくりと引いた。


「――っぉえっ……!?……げほっ……ぅくっ……」

不意に止まった責めに、身体が追いつかない。笑い続けた事で乾いた喉を空気が叩き、イオは大きくむせ返る。

時間にして20分か、30分か。
時間の感覚などはとうに失ってしまったし、無限に等しい時間の悪夢ではあったが、流石に本当に無限の時間が経過した訳ではないだろうと、イオはぼんやりと霞掛かった頭で、そんな詮無き事を考えていた。

身体は未だ十字に拘束され、その拘束は少しも緩む気配が無い。恐らく、まだまだ解放するつもりもないのだろう。
だがそれでも、自分の意思で呼吸が出来る、ただそれだけで、今の彼女には十分すぎる位の、平穏のひと時であった。

つい1時間程前まで無意識に行っていた『呼吸』という行為に、恐らくイオは生まれて初めて感謝した。
何かを喋る事も無く、乱れた髪や服を気にする素振りも見せず、イオはただひたすら一心不乱に、大きな深呼吸を繰り返す。

その姿は、酷い有様であった。
暴れ続けて消耗した身体から流れ出た汗でその服はじっとりと濡れ、長い間握り締められていた掌には、うっすらと血が滲み。
長時間の間望まずも与え続けられた狂った笑顔によって、顔は汗とも涙とも涎とも付かぬ液体でぐしゃぐしゃになっている。
先ほどまでの責めの余韻か、その身体は、時折何かを思い出したかのように、ぴくんぴくんと小さく震えていた。

そんな、既に満身創痍の彼女に、<模倣体>が似つかわしくない優しい声で、休息を告げる。

「流石に貴方も少し疲れたでしょう? 少し……休憩しようかと思ってね」

「……?……な……んで……っ」

正直、イオには彼女の意図が読み取れなかった。自身を壊すだけであれば、休息など不要の筈だ。
ただひたすらに責めて責めて責め抜いて、本当に廃人になるまでそれを続ければ良いだけの話である。
その事実を想像する事自体、今の彼女にとっては恐怖以外の何者でも無かったが、その恐怖と同じ位、この『休息』は彼女にとって不気味なものであった。
まさか、この人外が自分の願いを聞き入れたのかという考えが一瞬頭をよぎるが、流石にそれは無いと、頭を振ってその考えを振り払う。

大きく息を荒げながら、怪訝そうな顔を向けるイオに対して、<模倣体>はそれを察したかの様に、淡々と話し始める。

「何故そんな不思議そうな顔をするの。だから、別に私は、貴方を殺したりするつもりなんて微塵も無いって、最初から言っていなかったかしら。
我々は、貴方の『心』が欲しいだけだと。そう言ったはずだけれど」

「っ……おれ……は……助かる……?」

その言葉にイオは、自身が思いの他安堵している事に気が付く。
もしかしたら、このまま話を続ければ、本当に自身を解放してくれるのでは無いだろうか。そんな淡い期待を抱いてしまう程に、<模倣体>が紡ぐ言葉は、温和なものであった。

「……この、人間の心っていうのも、思っていたより不便ね。貴方の心も、こんなにも自制の利かないものなの……?」

だが、直後。再び<模倣体>の声色が少しずつ、先ほどまでの冷たさを取り戻し始める。

その言葉の意味するところは、イオには未だ理解できない。
だがこの雰囲気は、先ほどまでの<模倣体>の纏っていた、人を人とも思わぬ『人外』の空気だと、彼女は直感で理解する、してしまう。
その『理解』は、恐怖となってその心に届き、彼女が後に続けるはずだった全ての言葉を、一瞬で詰まらせた。

「……ひっ……!?」

次に続<、<模倣体>の言葉が怖かった。
イオは自身の耳を塞ごうと必死になって暴れるが、どれだけ暴れても、彼女を戒める触手が、その自由すらも許さない。

「……さっきまで、貴方が楽しそうに踊ってたのをずっと見てて、ふと思ったの……私の手で、貴方を壊してみたい、って」

その呟く様な一言と同時に、イオの身体に二本の新たな触手が、ぬるりと重い音と共に迫る。

出来れば、このまま終わって欲しかった。
だが、状況的にそうそう逃がして貰えるなどと都合の良い事が起きないだろう事は、彼女も不本意ながら理解してしまっている。
また、『あれ』が始まる。直感的に理解した彼女は、せめて少しでも耐えようと、僅かばかりの覚悟を決めた。

だが、イオがそこから先を理解する前に、その触手は、彼女の予想を超えた動きを始めた。

「―――ふぐぅッ!?」

その内一本は、彼女の口を覆うようにして巻き付き。
もう一本は、彼女の目の周りをぐるりと覆う様にして、その光を奪う。
唐突な出来事に、イオは無意識に声を荒げるが、その声は口枷となった触手に阻まれ、くぐもった音となって発されるのみ。

状況に理解が追いつかず、軽いパニック状態に陥っているイオを尻目に、<模倣体>は恍惚とした声で、しかし淡々と喋りだす。

「とは言っても、任務は任務。私一人では、どう頑張ってもこの子達より優しい責め方しか出来ないから、貴方を壊すのは難しいかもしれない。けれど、だったら……こういうのは、どうかしらね?」

その言葉と共に、<模倣体>が、イオの首筋を、つっ、と軽くなぞる。

「っんッぐぅううぅぅふふふふふぅぅっ!!?」

直後、イオの身体が一際大きくびくんと弾み、声にならない声を上げて絶叫した。
やっとの思いで正常に戻したはずの呼吸が、人外の手により再び、一瞬で歪む。

その姿を愉しそうに眺めながら、<模倣体>は、くすくすと、上品な笑みを零す。

「あぁ、良いじゃない。期待通りで嬉しいわ」

イオは、その艶やかな声を耳にしながら、この『仕掛け』の意味を一瞬で理解した。

幾らイオがくすぐりに弱いとはいえ、流石に平時なら、首筋を少し触られた程度でこんな声を出したりすることは、決して無い。
故に、この<模倣体>は、人為的に、この『異常』を作り出したのだ。

目が見えず、次に責めが来るポイントの予測が出来ず、吸い込む息は、口枷によって大きく阻害され。
そんな致命的に無防備な状態で、先程まで延々と嬲られ続け、極限まで敏感になった身体を、再び責められなければならない。
たかが一撫ででこの苦痛。
今度は責め手が一人に限られているとはいえ、その程度の事では、この状況下ではもはや何のハンディキャップにもなり得ない。

だが、そんな事実を強制的に受け入れさせられ、恐怖の余り小刻みに震えるイオに対し、人型の悪魔は更にもう一段、奈落への階段を降りる事を強制する。

「……感度は素晴らしいのだけれど……やっぱり邪魔ね、その服」

まさか、とほんの一瞬、イオの脳裏に、最悪の想像が過ぎった。
その言葉の意図するところは、一つしかない。
だが、それを理解した所で、その行為を止める術が、今の彼女には、無い。

次の瞬間には、本当に呆気なく、その想像は現実のものとなる。

イオの周りを漂う触手が、彼女の上着を力ずくで引き裂いた。

「~~っっんむ゛ぅぅぅぅうううぅぅぅっっ!?!」

今度は、くすぐりによって引き出された物ではない、正真正銘の、文字通り絹を裂くような悲鳴が上がる。

フォトンで多少の保護がされているとはいえ、どうあがいても所詮は服。
触手の化け物じみた怪力で引っ張られたそれは、いともあっさりとただの布切れと化し、彼女の病的に白い素肌、そこに刻まれた亜人の証、そして、未だ幼さの残る扇情的な双房が、一瞬で露わになる。


「これで、良いかしら」

「ふぅぅっ……! うぅっ……!!」

<模倣体>は、完全に無防備となったイオの身体を見て、満足げに一言呟いた。

その雰囲気から察するに、恐らく本当に<模倣体>にとっては、文字通り『邪魔だから取り払った』程度の認識しか無いのだろう。
だが、先程のその行為によって、イオの心に刻まれた傷は、そんなに生易しい物ではない。

自分の意思に完全に反して、自分を汚そうとする者の前に、本当に無抵抗で無防備なその身体を晒す事になったのだ。
相手は人外、しかも見た目も同姓とはいえ、その恥辱は、決して簡単には拭い去れる物ではなかった。
その顔は羞恥で真っ赤に染まり、その身体は屈辱と恐怖で小刻みに震え。
目隠しで覆われた瞳からは、目の前の対象に対する憤りと、この状況をどうにも出来ない虚しさが涙となって、次々に溢れ出る。

「あら。泣いてるのかしら? 可哀想に。くすっ」

<模倣体>は、まるで人間の真似事でもするかの様に、心にも無い優しい言葉を投げかける。
模造品の優しさと、偽物の慈愛に満ちた表情で。

「くすくす、そんなに悲しそうな表情をしていても、それでも、人間って、笑えるのかしらね?」

そう、<模倣体>の本心は、ただただ単純に『任務の遂行』のみである。
そこに、人間らしい慈悲の心など、期待できるはずもないのだ。

自身の責めを阻害する最後の障害を取り除いた<模倣体>は、うっすらと微笑みを浮かべ。
慈悲に満ちた表情のまま、ずぶりと、イオの大きく開かれた無防備な両腋の下に指を沈めた。

「―――んふう゛ううぅぅぅぅぅぅぅうぅぅっ!?!」

それだけで、イオの身体が再び、びくんと、大きく震える。
神経を直接舐めまわされる様な不快な刺激が再び、イオの身体を激しく叩いた。

「ほら。泣かないで、ね……?」

ゆっくりと、人外の指が、イオの腋を掻き回す。
その刺激は、単体で見れば確かに先程の触手での責めに比べれば比較的易しいものである、筈だった。

「~~ッッんんむ゛ぎいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃッッ!!」

だが、予想していたそれを、遥かに上回るくすぐったさの波に、イオは一瞬、引き攣った様な、声にならない悲鳴を上げる。

先ほどの触手より、刺激の根源である『異物』の数は、明らかに少ない。
だが、その『異物』一つ一つが、先ほどまでとは比にならない程のくすぐったさを送り込んでくる。

責める側の何が変わった訳でもない。
ただ少し彼女の身体の感覚が、鋭く細く、研ぎ澄まされただけなのだ。
言ってしまえば、彼女の生物としての身体機能が引き起こした、ただの錯覚でしかない。

「んっぅふお゛ぁあああああああッ!!? ん゛あ゛あぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!」

けれども、原因がそんな下らないものである以上、そのくすぐったさを緩和させる手段など存在しない。
彼女の心が、自身を苛む苦悶をさらに過酷なものにする事を、無意識下で選択しているのだから。

「ふふっ、元気になってくれて良かったわ」

加えて、先ほどの責めで、彼女の身体に浮かんだ汗が潤滑油となり、送られてくる刺激を更に苛烈なものにする。

人外の指が、ぐちゅぐちゅと淫靡な音を立ててイオの腋を一撫でするたび、その皮膚はぷるぷると震え。
それによって送り込まれる狂おしい刺激の一つ一つが、彼女の身体を、一瞬の休みもなく責め立て続ける。

「ふぅッぎひぃぃぃぃいいいいいッ!?! んッぎひゅひゅひひひひいひひひひ!!!」

イオの表情は、目隠しと口枷に覆われてほとんど見えず、それだけでは、彼女が今、どれほどの苦痛に苛まれているのかを想像するのは難しい。

だが、暴れる彼女を捕らえる触手の、みちみちと鳴る音が。彼女の喉から絶えず漏れる、狂った楽器の様なくぐもった悲鳴が。
どうにかして耐え切れない刺激から逃れようと、小さくびくびくと震えるその腋の下が。くすぐったさを少しでも緩和させようと、ぶんぶんと振り回されるその首が。
表情は見えずとも、その所作の一つ一つが、今の彼女を嬲る刺激の強さを、雄弁に物語っていた。

「あぁ、辛かったらいつでも言って頂戴。今は機嫌が良いから、止めてあげても良いわよ?」

「ぐッッひゅひゅひゅひゅひゅひゅうううぅぅうぅっ!! ん゛ッぉあぁあぁぁあぁぁぁぁあぁっっ!!!」
(くすぐったいぃっ! 本当に止めてぇぇぇぇえぇっ! お願いっっ!! お願いだからあぁぁぁぁぁああぁっ!!)

イオはこのくすぐりから逃れようと、必死に喉から声を絞り出すが、その声は口枷となっている触手に遮られ、どう足掻いても、言葉としては聞き取れない音にしかならない。
だがそれでも、少しでも届くことを信じて、必死に叫び続けるしか、今のイオに出来る事はない。

そして、そんな当たり前の事、<模倣体>にだって解りきっている。解っていて、甘い言葉を囁いているのだ。

「くす。何よ、やっぱりまだまだ元気じゃない」

「んんッぐうぅぅぅぅっふふふふふふふふふっっ!?! ふッッぐぅうぅぅうっふふふふふふふふふふふっ!!!」
(止めてえぇぇえぇぇえぇえぇえっ!! 本当に無理ぃっ!! 本当に死んじゃうっっってえぇぇぇっ!!)

「それなら、もう少し強めにしても大丈夫かしら?」

「ん゛っあ゛あぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁッ!?! あ゛え゛えぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇえぇッッ!!!」
(そんな……っ! やだあぁぁっ! 待って! 待ってぇ! ホントに待ってったらあぁぁぁああぁっ!!)

<模倣体>は、ぼそりと呟くと、ぐちゅぐちゅと音を立てながら嬲っていた腋の下から、少し下の方へ、すっ、と手を滑らせる。

「―――んぐうぅぅっっ!?」

ただそれだけの動作で、身動きの取れないイオの身体が、ぴくんと小さく震える。

延々と休み無く続けられたくすぐり責めによって、イオの身体は、受ける刺激の全てを「くすぐったい」と感じられない。
ほんの小さな指の動きでも、身体を静かに伝う汗も、身体を優しく撫ぜるそよ風ですらも、その全てが自身を責めているとすら感じてしまうほどに、今の彼女の全身は敏感になっていた。

<模倣体>はそんな彼女の姿を見て、少しばかりの笑みを浮かべると、

ひと呼吸置いて、その無防備な脇腹に、おもむろに指を突き立てた。

「~~っんッッぎぃいぃぃいいいぃいぃいいぃぃぃいいいぃぃぃッッ!?!」
(―――!?!―――ッくすぐったっあぁぁぁぁぁぁぁぁああぁああぁ!?!)

その行為に、イオの身体が再び、大きく跳ねた。
ぎちり、と、彼女の両腕を押さえつける触手が一際大きく軋む。

「……思ってたよりは、良好な反応ね」

<模倣体>は、その様子を見て愉しげな表情を浮かべ、ゆっくりと、その食い込ませた指を動かし始めた。

「ふっぎゅうぅうぅっふふふふふふひひひひひひっっ!!! っひぐッッぅっふふふふふふふふふふふふふふふっっ!!!」

一度その指がくい込むたびに、イオの全身を、甘い電撃が流れる様な刺激が包み込む。

まるで、身体の中から直接空気を絞られている様な錯覚を抱くほどのその凄まじい刺激に、
イオは先程までより更に大きな喘ぎ声を上げながら、がくがくと身体を震わせた。

「ッんお゛おぉぉおおぉあ゛あぁぁぁぁあぁッ!?! んん゛ぃいいぃいっっひひひひひひひひひひひひひひひ!!!」

ぐにぐにと指が食い込むたび、彼女の身体がその辛さを懸命に表現しようとしているのか、その脇腹がぷるぷると揺れ動く。

彼女が苦悶の叫びを上げる度に少しだけ力の入るその身体が、柔らかな腹部が指を押し返そうとするその感触が、ほんの些細な抵抗の意思の表れのようで。
そんな小さな抵抗を受けるたび、<模倣体>は、それを愉しむかのように、何度も何度も、ぐにぐにと揉みしだく。

「あら。もしかして……本当に弱いのかしら?」

責めが始まってから、初めて人外が浮かべたその『笑み』は、イオの瞳には当然、映らない。
だが、その表情の意味を、イオはその身体で、理解した。

ずぶり、と。そんな擬音が聞こえるほどに、人外の指が少女の身体に深く食い込む。
<模倣体>はそのまま、その身体の底から、笑いを引きずり出そうとするかの様に、ぶるぶると指を震わせた。

「―――ひぃぃッぎゅふふふふふふふふふふふふふふふふふッッ!!! んんむ゛ぃぃいいぃぃッッひひひひひひひひひひひぃっ!?!」

今度は先程のように、抵抗の余地がある責めですらない。
休み無く送られてくる歪んだ刺激は、一瞬の緩みすら逃がすことなく確実にその身体の奥底へと入りこみ、彼女の身体と心に、だたひたすらに、望まぬ笑いの衝動を与え続ける。
次々と切り替わる別種の刺激に理解が追いつかず、イオは限界まで目を大きく見開き、狂ったように笑い声を上げ続けるしかできない。

「う゛あ゛あぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁああぁぁあぁ!!! ひッッぎぃぃいぃっひひひひひひっひひひひひひひひひひひひひッ!!!」
(本当に無理ぃっっ!! 息がっ!! 息ができないっ!! 死ぬっっ!! 殺されるっっ!!!)

その指の一本一本が波打ち、その柔らかな皮膚を震わせ、先程の揉むような動きとはまた違う、けれどもそれにに匹敵する強烈な刺激を送り込む。
それは、限界まで研ぎ澄まされた神経で受け止めるには、あまりに残酷ともいえるほどのくすぐったさであった。

「ッぅぐひゅひゅひひひひぃふふふふふふふふふふふふふふふふふ!!! ん゛あ゛ぁあッひひひひひいいいぃいいぃぃぃぃぃいいぃんんっっ!!!」

イオは、この地獄のようなくすぐったさから一瞬でも逃れようと、拘束されていない腰をびくん、びくんと震わせながら絶叫する。

だが、どんなに大きく身体を振ったところで、その身体にがっしりと食い込んだ指は、一時たりとも彼女から離れる事はない。
むしろ、その動きで余計な振動が新たに加わり、送られてくる刺激をより無作為で強烈なものへと変えてすらいた。

「っん゛ぐうぅぅぅうううぅっっぅふふふふふふふふふふふふふ!?! む゛ぐぃぃいいいいいいいいいいぃぃいぃぃぃぃぃいぃぃぃいぃッッ!!!」

「くすくす。そんなに誘われちゃ、此方も応えない訳にはいかないわ……ね?」

そんな淫靡なダンスをまじまじと眺めながら、<模倣体>は、くすくすと静かに、そしてそれ以上に愉しそうな笑みを零すのであった。






「―――お゛ぁっ……ぁうぅっ……あ゛ぁひひぃっ……っ!」

時間にして、およそ1時間程度が経過しただろうか。
未だなお飽きる事なく、<模倣体>の戯れは続いていた。


<模倣体>の様子は、1時間前となんら変わりない。淡々と粛々と、時折愉しそうに、イオの脇腹や腋の下を、弾む指先で往復している。
だが、その『戯れ』を延々とその身に受け続けていた今のイオの姿は、少し前の彼女と本当に同一人物かと言われると疑ってしまう程に、酷く憔悴していた。

延々と緊張状態を続けていたその身体も、もはや抵抗する力も失ってしまったかのように、時折力なく、ぴくぴくと震えるだけの状態となり。
その口から漏れ出ていた愛らしい笑い声は見る影もなく、今は無理に搾り出したかの様な弱々しい音を発するのみとなっていた。

「No.205315、任務、了解……」

「――っ……!……!?」

イオは、自分の感覚を一瞬疑ぐってしまった。彼女がどんなに哀願しても決して休む事すらしなかった<模倣体>の手が、するりと音を立てて離れる。

「……御免なさいね。名残惜しいのだけれど……遊びはここまで……」

(……お、わり……って……?)

楽観的に聞けば、『これでこの責めはおしまい、解放してあげる』と、そう取れなくも無い言葉。
だがイオは、この悪魔がどうやっても自分を逃がすつもりなどないという事を、この数時間で理解してしまっていた。

「そろそろ転移ゲートが到着するみたい。その前に、任務は片付けておかないと……」

その言葉と同時に、イオの身体を戒めていた、その口を塞いでいた、その光を奪っていた全ての触手が、ずるりと鈍い音を立てて、一斉にイオを解放する。
長時間の責めで極端に体力を失ったその身体は、触手の支えを失った瞬間、糸の切れた人形のように、どさりと地面に崩れ落ちた。

「っぷぁ……っ!? げ……ほッ!!」

この行為も先程の発言のように、楽観的に見れば『解放』に見えなくもない。
だが違う、きっと違う、間違いなく違う。
イオはそれを確信していた。この悪魔は人の心など持ち合わせていない、化け物なのだ。

けれど、それでも、仮に<模倣体>の側に逃がす気がないとしても、物理的に拘束を受けていない今であれば、もしかしたら逃げられるかもしれない。
これから行われるであろう『遊びではない何か』が始まったら、本当に、殺されてしまう。

涎と涙と汗でぐしゃぐしゃになった顔を誰かに見られたくないとか、布きれ一枚纏っていない自身のあられもない姿を衆目に晒すのが恥ずかしいとか。
そんな事を考えている余裕など、今の彼女には全くと言っていいほど無かった。

早く『これ』と距離を取らなければ。早く誰かに助けを求めなければ。
考えるよりも前に、イオの身体は、反射的に<模倣体>に背を向けていた。

(逃げ、ないと……っ! 殺される……! 本当に殺される……っ!!)

だが、イオのその意思とは裏腹に、身体が思うように動かない。
思っていた以上に身体が重い。光が眩しすぎて前がよく見えない。酸欠で平衡感覚すら失われ、まともに立つ事すら難しい。
焦る心の必死さとは裏腹に、その身体は、せいぜい芋虫のようにみじめに這いずる程度の動きが限界だった。

そんなイオの背後から、悠々と<模倣体>が、最後の合図を告げる。

「――最後に言い残す事があるなら、今のうちに言っておくといいわ。これで、お終いだから」

<模倣体>の背後の地面から、ずるりと重苦しい音を立てながら、黒い影が現れた。

その姿を見たイオの言葉が、詰まる。
溢れ出た涙で真っ赤に染まった瞳からは、先程までの責めでもう出し尽くしてしまったと思っていた涙が一筋、零れ落ちた。

「あ……あぁっ……!」


それは、簡潔に単語にすれば、先程と同じ『触手』。
だが、その姿形は、先程までのそれとは、決定的に違っていた。

その姿は、黒光りする巨大なワーム、と言うのが正しいかもしれない。
その直径は優に1メートルを超え、その先端部分は、先程のそれと違い、巨大な口の様に変形している。
まるで生き物のように胎動するその『口』の中には、ぬらぬらと揺れ動く細い触手がびっしりと、まるで手招きするかのようにして、彼女を待ち構えていた。

そんな『蟲』が、地面からずるずると這い出て来ており、決して遅くない速度で、必死に這い蹲る彼女の元へと、その巨体を伸ばしていたのだ。

(嫌……やだぁっ! あんなの、本当に死んじゃうッ……!!)

「ぃ……やぁっ……たすけてっ……! お願ぃ、っ……」

最早、今の彼女にはあれと戦う体力はおろか、まともに逃げ遂せるだけの体力すら残っていない。
イオの口から、思わず蚊の鳴く様な声で、哀願の言葉が漏れる。

喉から搾り出すような彼女の声は細く、弱々しく、聞く者の庇護欲や罪悪感を掻き立てる様な、悲痛な叫び。
その声を聞き、その姿を見たならば、誰しもがこれ以上は危ないと、そう判断する程に、今の彼女の疲弊は歴然としたものだった。

だが、それは責め手がもし、人間だった場合の話。
不運な事に、今彼女を責め立てているのは、人間の倫理観を持たない、唯の化け物。
その悲鳴も、人外にとっては<被検体>の状態を計る為だけの一つの目安にしか過ぎないのだ。

<模倣体>は、何も応えない。ただ淡々と、冷めた瞳で、震える彼女を眺めているだけ。
だが、その意思を代行するかの様に、イオのすぐ後ろまで近づいた触手が、歪な音を立てて、その口を大きく開く。

「ひっ―――」

そこから先は、本当に一瞬の出来事だった。

『蟲』の中から飛び出た細長い触手が、目にも止まらない速さでイオの右足に絡み付き、その見た目からは想像も付かない凄まじい力で、それを「口」の中に引きずり込む。
彼女が自身の陥った状況を理解した時にはもう、その「蟲」は、ばっくりとその下半身から脇腹辺りまでを丸ごと呑みこむ様にして捕らえていた。

それを確認した<模倣体>が、まるで先程までの戯れの時とは別人の様に底冷えする声で、『行為』の再開を告げた。

「―――ぁっ―――はぁッああぁぁぁぁぁあぁああぁぁぁぁぁぁぁッッ!?!」

直後。「蟲」の身体が、その口内にある無数の触手が、一斉に胎動を始める。

「なあぁぁッぁぁあっっはっはっはっはははははははははははっ!! なにッこれっぇえっへへっへへへっへへへへへへへ!?! なにこれえぇへへぁッはははははははははははははッ!!!」

イオは、自身が笑い始めるその直前まで、襲ってきたその刺激が『くすぐったさ』であるという事を、認識すらできなかった。

それは先程と同種の『くすぐったい』という感覚の筈。
だが、『蟲』の送り込んでくるそれは先程までのそれとは明らかに異質な、ある意味で殺意の様なものすら感じる、それほどまでに強烈な刺激だった。

「ッやっっあ゛っぁぁッはっはははははははははははははッ!!! こッれっえぇえっへっへへへへへへへへへへへへ!!! 
 これきつッいぃぃッひっひっひひひひひひひひひひひひひひひひひぃ!!! っこれぇやだぁぁぁあぁぁッはっはっはっはっはははははは!!!」

だが、それも当然といえば当然の話。
先程までの『触手』よりも、<模倣体>よりも、遥かに圧倒的な数の責め手が、『蟲』の口内では蠢いているのだから。

それぞれの触手の形状も、爪の様に鋭く尖ったもの、ブラシの様に硬い毛が不規則に羅列されたもの、羽の様に柔らかく細い毛の生えたものなど、それこそ枚挙に暇が無い。
『蟲』に呑みこまれて視認すら出来ないイオの胴体から下では、そんな無数の悪意が、それこそ触れていない場所などないと思える程にびっしりとその身体に張り付き、彼女を責め立てていた。

「おにぇがッッはっはっははぁぁあははははははははははははははっ!!! おねがいッだからぁっはっはっはっはははははははははははははははは!!!
 ゆるっしてえっぇえぇぇっへっへっへっへっへっへへへへ!!! たすったすけてえぇぇえぇえッッへっっはっはははははははははははははははははッッ!!」

その、常識的には有り得ない程の強烈なくすぐったさに、最早、イオが耐えられる余地など、一瞬たりとも無い。
イオは必死になって自由な両手で蟲を叩いたり引っ張ったりしてはいるものの、その度にぐよんぐよんと奇妙な音が鳴り響くだけで、蟲が剥がれる様子は微塵も無かった。

ただひたすらに赦しを乞いながら、無意味な抵抗を繰り返し、時折そのくすぐったさに耐え切れず、蟲を叩く事すら忘れて身体を大きく弓なりに仰け反らせる。

その瞳からは、先程の様な恐怖から来るものではない、正真正銘くすぐったさによって搾り出された大粒の涙がぼろぼろと休み無く溢れ、
扇情的に喘ぐ口からだらしなく零れる涎が、まるで魚のようにびくびくと暴れる身体を流れる汗が、広い砂浜に吸い込まれて消えていく。

傍から見て想像するだけでも怖気の走るような、そんな凄まじい刺激を、その小さく華奢な身体で、一時の休息も無くひたすらに受け続け、
体力も気力も、あらゆる物を搾り尽くされているであろうその身体から、どこにそんな力が残っていたのかと疑問に思うほどに、イオは、狂ったように笑い続ける。

「―――辛いかしら、なんて、聞く必要すら無いわよね。この子は、今までの貴方から得られた『情報』を元に、貴方を責める為だけに、生まれた子なのだから。
 貴重な体験よ? 貴方。私にはその刺激がどれ程かは解らないけれど……恐らくオラクルの技術如きでは決して味わえない程度には、苦しい思いが出来る筈と思うわ」

「そんッにゃぁっはっはっはははははははははははは!?! そんなのぉッぁっはははっははははははっははははは!!! むりぃぃッひっひっひひひひひひひひひひひひッ!!!
 ゆるしぃぃいひひひゃぁぁあっはっはっはははははははははははは!!! あ゛ぁーーッあぁぁぁぁっはっはっはっはっはははははっははははははははッッ!!!」


イオにとってどんな聞きたくない言葉でも、一度耳に入ってしまえば、嫌でも覚えてしまう。
この『蟲』は、自身の弱点をこの上なく熟知していて、その弱点を、自身が最もくすぐったく感じるであろう方法で責め立てているという、その事実。

無論、そんな事を聞かされれば、自身が今責められているであろう部位を、否が応にも意識してしまう。

その脇腹を、一定の感覚を空けながら、優しくさわさわと撫でるその触手も。

「ぅぁッッひぃぁあぁぁぁぁぁああぁぁあぁあぁぁぁっっっ!?! ふぅぅうッぁぁっっはっはっはっはっはははははっははははははははははは!!!」

太腿を、爪を立てるようにしながら嫌らしく引っ掻くその触手も。

「それぇぇッぃやだあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっははははははははははは!!! ずるいぃっずるいいぃいっひっひっひひひひひひひひひひひひひひひっ!!!」

肋骨と脇腹の隙間から、少し痛い位の力でぐりぐりと揉んでくるその触手も。

「いたっぃひぃいぃひひひひひひひひひひっひひひっ!!! いたぁぁッッくすぐったぁぁぁあぁあひひゃぁあーっはっはっはっはははっははははははははははは!?!」

臍の中でまるで小さな虫の様に、こしょこしょと這い回るその触手も。

「ぞくっぞくするぅぅうふっふふふふふふふふふふふふふふッ!!! そこほんとにッはんそくだってえええぇぇぇぇええぇぇえっへっへっへへへへへへへへへッ!!!」

その全てが、彼女を壊す為だけに作られた、オーダーメイドの悪意。
一度それを「くすぐったい」と認識してしまえば、その意識は、最早どこかに逸らそうにも逸らせない。

意識すればするほど、その残酷な刺激はどんどんと強いものだと感じられるようになり。
そのくすぐったさが強まれば強まるほど、そのくすぐったい場所を意識せざるを得なくなっていく。

その様子を見た<模倣体>は、小さく、口の端を吊り上げた。

「そこぉぉッやめぇぇええぇぇッっへっへっへっへへへへへへへへへへ!?! むりッッむりぃぃいぃッひっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひっ!!!
しぬぅぅうっふっふふふふふふふふふふふっ!!! ほんっとにぃッしんじゃうぅぅうッひひぃぃぁあぁーーっっはっっはっははははははははッッ!!!」

「大丈夫よ。死ぬほど辛いでしょうけど、それでもまだ、死なない程度には調整はしてあるわ。 身体の方は、ね……」

「ッいぎぃッいきがあぁぁぁッはっはっはっはっはははははははははははははは!!! いきできなあぁぁあッッはっはっはっぁははははははははははははは!!!
 たしゅっけぇぇええッへっへっへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!! だれかっったしゅけてぇぇえぇッはははははははははははははははは!!!」

その身体を襲うおぞましいくすぐったさから何とかして逃れようとして、その悪魔的な刺激を一瞬でも紛らわそうとして、今日になって何度目かも解らない、助けを求める声を上げる。

だが、どんなに叫んでも、暴れても、その声は誰にも届かない。その努力は何の実も結ばない。

その声は広大な星の一部と消え、その足掻きは無為に体力を消耗するだけ。
その心は、先程の一言で完全にくすぐり責めの魔力に絡め取られた。

もはや、彼女の身体は、その『くすぐり』という児戯にも等しいそれに翻弄されるだけの、唯の人形。
その事実に気づいていないのは、当のイオ本人だけ。

<模倣体>は、それに当然の如くそれを悟る。それが<模倣体>に与えられた任務なのだから。
つまりは、先程の一言で。それによって罅の入ったイオの心を以って、<模倣体>の先遣任務が、完遂されたのだ。
言葉だけみれば、児戯にも等しい『くすぐり』という行為によって、その身体を、心を、全てを戒め、閉じ込める。

「さて、そろそろ良い頃合ね。本隊も到着する頃だし、お終いにしましょう、イオ」

ぞぶり、と。重苦しい音を立てて『蟲』が、ゆっくりと、イオの身体を呑み込みはじめる。
今度は嬲る為にでも、捕らえる為にでもない。正真正銘、壊す為に。



「―――ッぅあ゛あっぁああぁぁッッっはっはっはっはっははははははははははは!??! ひぎいぃッひぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひッ!?!
 まってえぇぇぇぁぁひぃひひひひひひひひひひひひひひッッ!!! まってまってまってってばっぁ゛ああ゛ぁぁッっはっはっはははははははは!!!」

『蟲』の口が、イオの胸までをずぶりと呑みこむ。

今の今まで全く触られていなかった、その少女らしい小ぶりな双房に、触手がずるりと手を伸ばした。
細くしなやかな触手が、まるで蛇の舌の様に揺れ動き、その愛らしい突起をころころと転がし、羽のような触手が、その周りをさらさらと、優しく撫で付ける。
本来、女性にとってはこの上無く甘い、甘美な刺激の筈のそれは、ひたすら『くすぐったさ』を刷り込まれ続けたイオにとっては、また新たな、『くすぐったさ』の元凶が増えただけに過ぎない。

「ぶふぅッあ゛ぁあッっはっはっははははははははははは!!! そこぉぉお゛おぉほんとにやっめッッへっへっへっへぇへへへっへへへへへへへへへへ!?!
 おっぱいはぁぁああははははっはっははははははははッッ!!! ほんとッッほんとにむりぃい゛ぃッひっひっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひぃ!!!」

『蟲』はずるずるとその身体を呑みこんでいき、その『口』は、美しいアーチを描く、腋の下へと到達する。
イオも必死防御しようともがきはするものの、びったりと密着しながらイオを呑みこみ続ける『口』に、腕を差し込む隙間などない。

どんなに腕を差し込もうとしても、どんなに必死に抵抗しても、少しずつ、その腕が護れる部位はゆっくりと、だが確実に狭まっていく。

最終的には、そんな腕の防御など無かったかの様に、『口』の触手は容易に腕の付け根までたどり着き、その扇情的な腋窪を、がりがりと、無遠慮に掻き回し始めた。
先程から何度も何度も責め抜かれ、極限まで敏感になっているその部位に次々と触手が辿り着くたび、イオは狂った様な悶笑を搾り出し続ける。

「そっこはああっぁああぁぁあっはっはっはっははっはははっはははは!?!? わきッッやだぁああっぁああぁぁあっはっはっはっはっはっはははははははははははは!!!
 ひぁ゛あぁぁぁぁあっはっはっはっははっははははははは!!! ぐるっじいいぃいぃっっひっひっひひっひっひひぃいはははははははははははははははははは!!!」

「……最後に残す言葉が笑い声、っていうのも、少しシュールだけれど。まぁ、悔いの無い人生を送れたかしら、イオ?」

そのままずぶずぶと、底なし沼に嵌った童の様に彼女の身体は少しずつ、呑みこまれていく。

「ひぎッぃいぁあぁぁああぁッっはっはっはっははははははははははは!!! ふッぎゅぅうっひっひっはっははははははははははははははははは!!!
 ぃっぎぃぃいひっひひゃっはっはっはははははははははははははははは!!! ぐひゅッひひひゃぁっはっはっははっはははははははははははははは!!!」

これで、本当に閉幕なのだ。

「貴方達風の言葉にするなら、『冥土の土産』って言うのよね、こういうの。
―――感謝しなさい? 本当の最後くらい、最高の笑顔で迎えさせてあげるわ」

「ぃあ゛ぁぁあぁぁッ!!! や゛だぁぁあぁああッッはっはっはっははっはははははははは!!! じにッたくな゛っぁははははははははははははははッッ!!!
 ゆるじてっぇぇぇぇええッッへへへははははははははははははははは!!! やだぁ゛ぁあッひゃっひゃっはははははははははははははははッッ!!!
 う゛ぉッあ゛ッはっはっははははははははははははははははははッ!!! あ゛ぁぁあーーッっはっはっははははははははははははははははは―――――


―――ごくり、という音と共に、その小さな身体は、完全に、『蟲』に呑まれて、消えた。


それを見届けた<化け物>は、先程までと何も変わらない無表情のまま、だが、どこか愉しそうに、ぼそりと呟く。

「なーんて、ね? 残念だけれど、まだ死なせたりしない。私が星に帰るまで、少し眠ってもらうだけよ。
―――それまで、お休みなさい、イオ。そしてようこそ、私達の故郷へ」

その言葉は果たして、向けられた者に届いたのだろうか。


それが確かめられるのは、まだ少し、先の話である。
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